赤ちゃんのクループ(急性喉頭炎)完全ガイド:犬吠様咳嗽の症状と応急対処法
真夜中、突然お子さんが犬の遠吠えのような「ケンケン」という激しい咳をし始めたら — ほとんどの親御さんが驚いてパニックになりますよね。この特徴的な咳の音は、クループ(急性閉塞性喉頭気管支炎)の代表的な症状なんです。クループは生後6ヶ月から3歳のお子さんに最も多く、秋から初冬にかけて特に多く発生します。怖く聞こえますが、ほとんどのクループは軽症で3〜5日以内に改善しますよ。この記事では、クループの症状、重症度の判断方法、ご家庭での対処法、そして救急受診の目安まで詳しくご紹介しますね。
クループとは?原因と発症時期
クループは、ウイルス感染によって喉頭(声帯)と気管(気道)に炎症が起こり、気道が狭くなる疾患です。医学的には急性閉塞性喉頭気管支炎(acute laryngotracheobronchitis)と呼ばれています。
主な原因ウイルス
- パラインフルエンザウイルス(1型、2型、3型):クループ全体の約75%を占める
- RSウイルス(呼吸器合胞体ウイルス)
- インフルエンザウイルス
- アデノウイルス
かかりやすい時期と年齢
- 年齢:生後6ヶ月〜3歳が最も多く、6歳まで発症の可能性あり
- 季節:秋(10〜11月)と初冬に集中的に発生
- 性別:男の子が女の子の約1.5倍多い
- 時間帯:症状が夜間〜明け方に悪化する特徴あり
お子さんの気道は大人と比べて直径がずっと細いため、同じ程度の腫れでも気道が狭くなる割合がはるかに大きいんです。大人が同じウイルスに感染しても声がかれる程度で済みますが、乳幼児では気道閉塞にまで至りうる理由がまさにこれなんですよ。
クループの4つの特徴的な症状
1. 犬吠様咳嗽(Barking Cough)
- 犬の遠吠えやオットセイの鳴き声のような独特な咳
- クループの最も代表的な症状です
- 一度聞いたら忘れられない特徴的な音
2. 嗄声(させい)
- 声帯に炎症が起きることで声がかすれたり、かれたりする
- お子さんの泣き声もいつもと違って聞こえる
3. 吸気性喘鳴(Stridor)
- 息を吸うときに「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という高い音が出る
- 気道が狭くなっているサイン
- 泣いたり興奮したりした時だけ聞こえれば軽症、安静時にも聞こえれば中等症以上
4. 呼吸困難
- 呼吸するたびに肋骨の間や首の下がへこむ現象(胸壁陥没/陥没呼吸)
- 鼻翼呼吸(鼻の穴がぴくぴく動く)
- 重症化すると唇や指先が青くなるチアノーゼ
クループの重症度を判断する
クループの治療方針は重症度によって変わります。下の表を参考に、お子さんの状態を判断してみてくださいね。
| 重症度 | 咳 | 喘鳴(ゼーゼー) | 呼吸状態 | 対処 |
|---|---|---|---|---|
| 軽症 | 時々ケンケンと咳 | 泣いたり興奮した時のみ | 安静時は正常 | 自宅で経過観察 |
| 中等症 | 頻繁なケンケン咳 | 安静時にも聞こえる | 軽い胸壁陥没 | 小児科を受診 |
| 重症 | 激しい咳 | 安静時にはっきりした喘鳴 | 著しい胸壁陥没、不穏状態 | 救急受診 |
| 呼吸不全の前兆 | 咳が弱くなる | 音が小さくなる | 意識低下、チアノーゼ | 119番通報 |
クループと他の疾患の見分け方
お子さんが咳をして呼吸が苦しそうな時、クループではない別の疾患の可能性もあります。特に以下の疾患との鑑別が重要ですよ。
| 特徴 | クループ | 細気管支炎 | 急性喉頭蓋炎 | 異物誤嚥 |
|---|---|---|---|---|
| 発症 | 徐々に(1〜2日かけて) | 徐々に | 急激(数時間以内) | 突然 |
| 咳 | ケンケン(犬吠様) | ゼーゼー(喘鳴) | 咳は少ない | 突然の咳/えずき |
| 発熱 | 微熱〜中等度 | 微熱〜中等度 | 高熱(39°C以上) | 通常なし |
| よだれ | なし | なし | 著しいよだれ | あることも |
| 姿勢 | 特定の姿勢なし | 特定の姿勢なし | 前かがみに座る | 特定の姿勢なし |
| 好発年齢 | 6ヶ月〜3歳 | 2歳未満 | 2〜7歳 | 6ヶ月〜3歳 |
ご家庭でのクループ対処法
軽症のクループはほとんどの場合、ご家庭で対応できますよ。以下の方法を試してみてくださいね。
1. お子さんを安心させる — これが最も大切!
お子さんが泣いたり興奮したりすると気道の腫れが悪化し、症状がさらにひどくなります。まず親御さんが落ち着いて、お子さんを抱っこして安心させてあげてください。縦抱きにすると呼吸が少し楽になりますよ。
2. 涼しい夜の空気に当てる
窓を開けるか、少しの間お外に出て涼しい空気に当ててみてください。冷たい空気が腫れた気道を収縮させて、症状が和らぐことがあります。実は、救急病院に向かう途中で車の窓を開けて走っているうちに、到着する頃には症状が良くなっていたというケースも多いんですよ。
3. 水分補給
温かい水分や母乳・ミルクを少量ずつこまめに飲ませてあげてください。水分は気道の粘膜を潤して保護し、脱水も予防してくれます。
4. 加湿器の使用
お部屋の湿度を上げると気道への刺激を減らすことができます。クールミスト加湿器を使うか、浴室でお湯を出して蒸気を作り、お子さんと一緒に10分ほど座っているのも助けになりますよ。
5. 解熱剤の使用
38.5°C以上の発熱がある場合は、アセトアミノフェン(カロナールなど)を使用しましょう。6ヶ月以上であればイブプロフェンも使えます。熱を下げるとお子さんが楽になり、呼吸も安定しますよ。
やってはいけないこと
- 市販の咳止め薬を飲ませること(クループには効果がなく、副作用のリスクがあります)
- 1歳未満の赤ちゃんにハチミツを与えること(ボツリヌス症のリスク)
- 無理に寝かせること(縦抱きの方が呼吸が楽です)
- 口の中を無理に覗いたり指を入れたりすること
救急受診が必要な場合
以下の症状が一つでも見られたら、すぐに救急病院を受診するか119番に通報してくださいね。
- 安静にしていても息を吸うときに「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という音(吸気性喘鳴)が続く
- 呼吸するたびに肋骨の間や首の下が深くへこむ(著しい胸壁陥没)
- 唇や爪が青く変色している(チアノーゼ)
- 唾液を飲み込めずにダラダラと垂れる
- お子さんが前かがみになって息をしようとしている
- 意識がぼんやりしている、ぐったりしている
- ご家庭での対処で症状がまったく改善しない
- 生後3ヶ月未満の赤ちゃんにクループ症状が現れた
病院でのクループ治療
病院では重症度に応じて以下のような治療が行われます。
デキサメタゾン(Dexamethasone)
- すべての重症度のクループに使用される中心的な治療薬
- ステロイド成分で気道の腫れを効果的に抑える
- 通常、シロップ剤で1回投与
- 投与後2〜4時間で効果が現れ、24〜48時間持続
- 研究によると、1回の投与で症状改善、再受診減少、入院期間短縮の効果がある
ネブライザーによるエピネフリン吸入(Nebulized Epinephrine)
- 中等症〜重症のクループに使用
- 吸入器で投与して気道粘膜の腫れを速やかに軽減
- 投与後10〜30分で効果発現
- 効果の持続時間が約2時間と短いため、病院での経過観察が必要
酸素投与
- 血中酸素飽和度が低下した場合に補助的に使用
クループの予防と再発パターン
クループそのものを完全に予防するワクチンはまだありませんが、原因ウイルスへの感染リスクを減らす方法はありますよ。
予防法
- 手洗い:最も基本的で効果的な予防法
- 咳エチケット:咳やくしゃみの時は肘で覆う
- 換気:室内の換気をこまめに行う
- クループ患者との濃厚接触を避ける
- インフルエンザ予防接種:インフルエンザによるクループの予防に有効
再発パターン
- クループは繰り返し起こることがあります(特に気道が細いお子さん)
- 通常、成長とともに気道が広くなり、3〜4歳以降は頻度が減少
- 年に2回以上繰り返す場合は小児呼吸器専門医の受診をおすすめします
- 早産児や気管挿管の経験がある場合は再発リスクが高くなります
ベビスナでお子さんの健康管理
お子さんの咳のパターン、発熱の記録、症状の変化をきちんと記録しておくと、受診時にとても役立ちますよ。ベビスナで体系的に管理してみましょう。
- 健康記録機能:咳の開始時期、発熱パターン、症状の変化を記録して、受診時に医療スタッフに正確な情報を伝えられます
- AIチャットボット相談:深夜にお子さんが突然咳を始めた時、救急に行くべきか悩んだ時、すぐにAIに相談できますよ
- 家族共有:パートナーや祖父母とお子さんの健康記録をリアルタイムで共有して、誰がお子さんを見ていても正確な状況把握ができます
よくある質問
Q: クループはうつりますか?
A: クループそのものがうつるのではなく、クループを引き起こすウイルス(パラインフルエンザなど)がうつります。他のお子さんに感染した場合、風邪として現れることもあれば、クループとして現れることもありますよ。症状がある間は保育園などの集団生活は避けた方が良いですね。
Q: クループの咳と普通の咳はどう見分けますか?
A: クループの咳は一度聞いたらすぐにわかるほど独特です。犬の遠吠えやオットセイの鳴き声のような「ケンケン」「バウバウ」という音がします。普通の風邪の「コンコン」という咳とはまったく違う、金属的で鋭い音が特徴です。インターネットで「クループ 咳 音」と検索すると実際の音を聞くことができますよ。
Q: 蒸気の吸入は本当にクループに効果がありますか?
A: 蒸気吸入がクループに効果的だという強い科学的エビデンスは限られていますが、多くの医師が気道の粘膜を潤す助けになると推奨しています。実は、それよりも効果的なのが涼しい夜の空気なんです。窓を開けたり、少し外に出たりすることで、腫れた気道が収縮して楽になることがありますよ。
Q: クループは通常どのくらい続きますか?
A: ほとんどのクループは3〜5日で改善します。症状のピークは通常2〜3日目の夜で、その後は徐々に良くなっていきます。咳が1週間以上続いたり、3日目以降も悪化し続ける場合は、他の原因の可能性があるので小児科を受診してくださいね。
Q: クループに抗生物質は必要ですか?
A: いいえ、クループはウイルス感染なので抗生物質は効果がありません。中心的な治療薬はデキサメタゾン(ステロイド)で、気道の腫れを抑える役割を果たします。ただし、細菌感染が合併した場合は、医師の判断で抗生物質が処方されることがありますよ。
参考文献



