赤ちゃんの窒息応急処置:乳児の背部叩打法と心肺蘇生(CPR)完全ガイド
離乳食を食べている時、小さなおもちゃを口に入れた時...赤ちゃんの窒息は、すべての親が最も恐れる緊急事態の一つですよね。こども家庭庁の統計によると、窒息は0〜4歳の不慮の事故死の上位原因となっています。でも、正しい応急処置の方法を事前に知っておけば、大切な赤ちゃんの命を守ることができます。この記事では、乳児の窒息応急処置、心肺蘇生(CPR)の方法、そして月齢別の窒息予防法まで詳しくご紹介しますね。
窒息とえずき:違いを知ろう
赤ちゃんが食事中に「オエッ」となると驚いてしまいますが、すべてが危険な状況というわけではありません。えずき(Gagging)と窒息(Choking)はまったく異なるもので、この違いを知ることがとても大切です。
| 区別 | えずき(Gagging) | 窒息(Choking) |
|---|---|---|
| 音 | 咳やオエッという音が出る | 音が出ない |
| 顔色 | 赤くなる | 青くなる(チアノーゼ) |
| 呼吸 | 呼吸できる | 呼吸できない |
| 泣き声 | 泣くことができる | 泣けない |
| 対処 | 見守る(自然に回復) | すぐに応急処置 |
赤ちゃんの嘔吐反射(gag reflex)は、大人に比べて舌のずっと前方にあります。そのため、離乳食を始めたばかりの赤ちゃんがよく「オエッ」となるのは、とても正常な反応なんです。嘔吐反射は、食べ物が気道に入るのを防ぐ赤ちゃんの自然な防御メカニズムなんですよ。
💡 えずきは赤ちゃんの自然な防御反射です。音を立てて咳をしているなら、赤ちゃんが自分で対処しているサインですので、慌てないでくださいね。1歳未満の乳児の窒息応急処置
⚠️ 1歳未満の乳児には絶対にハイムリック法(腹部突き上げ法)を使わないでください!乳児の肋骨や内臓は非常にデリケートで、骨折や臓器損傷のリスクがあります。赤ちゃんが音を出せず、唇が青くなり、呼吸ができない窒息状態が確認されたら、すぐに以下の手順を始めましょう。
Step 1:背部叩打5回(Back Blows)
- 赤ちゃんを片方の腕の上にうつ伏せに乗せましょう
- 赤ちゃんの頭を体よりも低く保ちましょう(重力を活用)
- 手で赤ちゃんの顎と顔を支えましょう
- 手のひらの付け根で、両方の肩甲骨の間を強く素早く5回叩きましょう
Step 2:胸部圧迫5回(Chest Thrusts)
- もう片方の手で赤ちゃんの後頭部を支えながら、180度ひっくり返して仰向けにしましょう
- 両方の乳首を結ぶ線のすぐ下の胸骨の上に、2本の指を置きましょう
- 胸が約4cm沈む程度に、強く素早く5回圧迫しましょう
Step 3:異物の確認
- 赤ちゃんの口の中を確認しましょう
- 異物が見えたら、指で慎重に取り除きましょう
- 見えない場合は、絶対に指を入れないでください(異物をさらに奥に押し込んでしまう可能性があります)
Step 4:繰り返し
- 異物が取れるか、赤ちゃんが呼吸を始めるまでStep 1〜3を繰り返しましょう
- 赤ちゃんの意識がなくなった場合はStep 5に進みましょう
Step 5:意識がなくなった場合
- すぐに赤ちゃんを硬くて平らな床の上に仰向けに寝かせましょう
- 119番に通報しましょう(または周りの人に通報をお願いしましょう)
- 乳児CPR(心肺蘇生)を開始しましょう
1歳以上の小児の窒息応急処置(ハイムリック法)
1歳以上のお子さんが窒息した場合は、ハイムリック法(腹部突き上げ法)を使うことができます。体がしっかりしてきているため、安全に実施できますよ。
Step 1:子どもの後ろに回る
- 子どもの後ろに膝をついたり立ったりして、子どもの腰の高さに合わせましょう
Step 2:拳の位置を決める
- 片手で拳を作り、親指側をお子さんのおへそとみぞおち(肋骨の下端)の間に当てましょう
- もう片方の手で拳を包み込みましょう
Step 3:腹部突き上げ5回
- 内側上方向(J字の形)に素早く力強く押し上げましょう
- 5回繰り返しましょう
Step 4:確認と繰り返し
- 異物が取れたか確認しましょう
- 取れていなければ、背部叩打5回+腹部突き上げ5回を繰り返しましょう
- お子さんの意識がなくなったら、床に仰向けに寝かせて119番通報後、CPRを開始しましょう
乳児の心肺蘇生(CPR)の方法
窒息であれ他の原因であれ、赤ちゃんの意識がなく正常な呼吸をしていなければ、すぐにCPRを開始する必要があります。ゴールデンタイムは4〜6分です。この時間内に脳への酸素供給が途絶えると、脳損傷が始まる可能性があります。
Step 1:意識の確認
- 赤ちゃんの足の裏を軽く刺激しましょう
- 名前を呼びながら反応を確認しましょう
- 反応がなければ次のステップに進みましょう
Step 2:119番通報+AED要請
- 周りに人がいれば、通報とAEDの手配をお願いしましょう
- 一人の場合は、スピーカーフォンで119番に通報しながらCPRを始めましょう
Step 3:胸骨圧迫30回
- 位置:両方の乳首を結ぶ線のすぐ下の胸骨の上
- 深さ:約4cm(胸の厚さの1/3)
- 速度:1分間に100〜120回(「アンパンマンのマーチ」のリズムが近いです)
- 方法:2本の指(人差し指+中指)を使用
- 毎回の圧迫後、胸が完全に元に戻るようにしましょう
Step 4:人工呼吸2回
- 赤ちゃんの口と鼻を同時に自分の口で覆いましょう
- 胸がわずかに上がる程度にやさしく息を吹き込みましょう
- 強く吹きすぎると空気が胃に入ってしまいます
- 1回あたり約1秒間吹き込みましょう
Step 5:30:2の比率で繰り返し
- 胸骨圧迫30回+人工呼吸2回を1セットとして繰り返しましょう
- 救急隊が到着するか、赤ちゃんが反応を示すまで止めないでください
- AEDが届いたら、すぐに使用しましょう
月齢別の窒息リスク食品
赤ちゃんの窒息事故のほとんどは食べ物が原因です。以下は特に注意が必要な高リスク食品です。ほとんどが4歳まで注意が必要ですよ。
| 食品 | 危険な理由 | 安全な与え方 |
|---|---|---|
| ぶどう、ミニトマト | 丸くて滑りやすく、気道にぴったりはまる | 縦に1/4に切って |
| ナッツ類 | 硬くて小さく、気道を塞ぐ | 細かく砕くかペースト状にして |
| もち | 粘り気があり気道に張り付く | 3歳以降、非常に小さく切って |
| こんにゃくゼリー | 弾力があり気道に密着する | 小さく切るか、3歳未満は避ける |
| 飴 | 硬くて滑りやすい | 4歳未満は避ける |
| 枝豆 | 丸くて滑りやすく、気道サイズに合う | 薄皮を剥いて半分に切って |
| りんご(生) | 硬い欠片が気道に詰まる | 薄くスライスするか加熱して |
| パン | 口の中で丸まって詰まることがある | 小さくちぎって少しずつ |
| ソーセージ | 丸い断面が気道にぴったり合う | 縦半分に切ってから小さく切って |
離乳食の段階別安全な食材サイズ
赤ちゃんの月齢によって、安全に食べられる食品のサイズは大きく変わります。赤ちゃんの発達段階に合った適切なサイズと食感を選ぶことが、窒息予防の基本ですよ。
6〜8ヶ月(離乳食初期)
- なめらかなペースト状またはよくつぶした形態
- 指の長さの柔らかいスティック状(BLWの場合)
- 指で簡単につぶせるくらいの柔らかさ
- 例:よく蒸したさつまいもスティック、バナナ、アボカド
9〜11ヶ月(離乳食中期)
- 柔らかく調理した小さな塊(えんどう豆くらいの大きさ)
- 指で簡単につぶせる程度
- さまざまな食感に慣れさせつつ、硬いものは避ける
- 例:柔らかく煮たにんじん、ブロッコリー、豆腐の小さな角切り
12ヶ月以降(離乳食後期〜完了期)
- 小さく切った欠片(1cm以下)
- ぶどうは必ず縦に1/4に切る
- お肉は繊維に沿って細かくほぐす
- 例:小さく切った果物、柔らかく煮た野菜、パスタ
家庭内の窒息予防チェックリスト
食べ物以外にも、家庭内のさまざまなものが赤ちゃんの窒息リスクとなります。次のチェックリストで定期的に確認しましょう。
毎日の床チェック習慣
- 毎日、赤ちゃんの目線(床の高さ)で小さなものがないか確認する
- 硬貨、ボタン、ビーズ、クリップなどの小さなものを片付ける
- きょうだいの小さなおもちゃの部品に注意する
- 落ちた食べ物のかけらはすぐに掃除する
特に危険なもの
- ボタン型(リチウム)電池:最も危険!飲み込むと2時間以内に食道にやけどが発生
- 磁石(ネオジム):2個以上飲み込むと腸壁を挟んで引き合い、腸穿孔の危険
- 風船の破片:割れた風船の破片は気道に密着し、除去が非常に困難
- 小さなおもちゃの部品:ブロック、ビーズ、人形の目など
おもちゃの安全基準
- 直径3.2cm以下の部品があるおもちゃは3歳未満には不適切(窒息テスト基準サイズ)
- おもちゃ購入時に対象年齢と安全マークを確認する
- 古いおもちゃは部品が取れやすくなっていないか定期的に点検する
ベビスナで健康を記録
赤ちゃんの健康状態をしっかり記録し、緊急時に備えることは、すべての親にとって大切な役割ですよね。ベビスナアプリを活用すれば、より体系的に管理できますよ。
- 健康記録機能:赤ちゃんの日々の健康状態、授乳、睡眠パターンを記録して、緊急時に医療スタッフに正確な情報を伝えることができます
- AI健康相談:赤ちゃんの健康について気になることがあれば、AIチャットボットにすぐ相談できます
- 成長発達の追跡:赤ちゃんの月齢別の発達状況を記録し、適切な離乳食の段階を確認しましょう
よくある質問
Q: えずいている赤ちゃんを逆さにして叩くべきですか?
A: いいえ、えずいているだけなら絶対にひっくり返さないでください。赤ちゃんが音を出して咳をしているなら、自分で異物を押し出しているサインです。窒息のサイン(音が出ない、唇が青い、呼吸できない)が確認された時だけ応急処置を始めましょう。
Q: CPR講習は必ず受けるべきですか?
A: ぜひ受けることをおすすめします。記事や動画で学ぶよりも、実習による体験学習の方がはるかに効果的です。日本赤十字社、消防署の救命講習、AHA(アメリカ心臓協会)認定機関などで乳児CPR講習を受けることができますよ。
Q: BLW(赤ちゃん主導の離乳食)は窒息リスクが高いですか?
A: AAPの研究によると、適切なガイドラインに従ったBLWの赤ちゃんは、従来のスプーン食べの赤ちゃんと窒息リスクに差はありませんでした。むしろ8ヶ月頃にはえずきの頻度が少なかったという研究結果もあります。大切なのは、適切な食品サイズの選択と、食事中に必ずそばで見守ることです。
Q: 何歳まで窒息のリスクがありますか?
A: 4歳までは高リスクです。ぶどう、ナッツ、飴などは必ず適切なサイズに切ってから与えましょう。5歳以降も、食事中に走り回ったり、寝転んで食べたりしないように注意してくださいね。
参考文献



