赤ちゃんの鉄欠乏性貧血 | 血液検査の数値・鉄剤の飲ませ方・治療ガイド

公開日: 2026-02-15最終確認日: 2026-02-15ベビスナ育児コンテンツチーム20 で読めます

赤ちゃんがやけに顔色が悪い、食欲がない、ぐずりが多い――もしかして貧血ではないかと心配になりますよね。実は、生後6〜24ヶ月の乳幼児の約12〜15%が鉄分不足の状態にあり、その一部が鉄欠乏性貧血(IDA)へと進行します。でも安心してくださいね――鉄欠乏性貧血は早期に発見すれば、鉄剤の服用だけで十分に治療できる疾患です。早期発見が大切な理由は、鉄分不足が長く続くと脳の発達に影響する可能性があるからです。この記事では、血液検査の数値の読み方、貧血の診断基準、鉄剤の種類と飲ませ方、治療経過のフォローアップまで詳しくご紹介しますね。

鉄欠乏性貧血とは?

鉄欠乏性貧血(Iron Deficiency Anemia, IDA)とは、体内の鉄分が不足し、赤血球のヘモグロビン生成が減少して、酸素を運ぶ能力が低下した状態のことです。乳幼児に最も多い貧血のタイプで、世界的には5歳未満の子どもの約42%が貧血の影響を受けています。

鉄分不足は3つの段階で進行します。なぜ段階を理解することが大切かというと、早期発見のタイミングが変わってくるからです。

1. 鉄貯蔵の枯渇期

  • 貯蔵鉄(フェリチン)が減少
  • ヘモグロビンはまだ正常範囲
  • 症状がほとんどなく発見が困難

2. 鉄欠乏性赤血球生成期

  • 血清鉄が低下し、トランスフェリン飽和度が低下
  • 赤血球の生成に影響が出始める
  • 軽い疲労感が現れることがある

3. 鉄欠乏性貧血

  • ヘモグロビンが正常値以下に低下
  • 赤血球が小さく色が薄くなる所見(小球性低色素性貧血)
  • 明確な症状が現れる
💡 鉄分不足は貧血になる前に見つけた方がずっと簡単に改善できます。ハイリスク(早産児、完全母乳育児など)であれば、症状がなくても小児科の定期健診で血液検査を受けておくと安心ですよ。

貧血ハイリスクの赤ちゃん

以下に該当する赤ちゃんは鉄欠乏性貧血のリスクが高いため、定期的な血液検査が必要です。なぜリスクが高いかの理由も知っておくと安心ですよね。

  • 早産児(在胎37週未満):妊娠後期に蓄えられるはずの鉄分が不足
  • 低出生体重児(2,500g未満):鉄分の貯蔵量が少ない
  • 完全母乳育児の赤ちゃん(6ヶ月以降、鉄分補給なし):母乳の鉄分含有量が低い
  • 12ヶ月前の牛乳摂取:腸の微量出血を引き起こす可能性
  • 離乳食の開始が遅い(7ヶ月以降も未開始):鉄分摂取の機会不足
  • 慢性疾患のある赤ちゃん:消化器疾患、アレルギーなど
⚠️ 早産児は満期産児より鉄分の貯蔵量が少ないため、生後2〜4週から鉄剤の補給が推奨されています。

貧血の症状:見逃さないで!

鉄欠乏性貧血は徐々に進行するため、初期の症状を見逃しやすいです。以下のサインに注意してくださいね。早期に気づくことで、治療の効果が大きく変わります。

初期症状

  • 顔、唇、爪が青白い
  • いつもより疲れやすく、活動量が減る
  • 食欲がない、または食事に興味を示さない
  • いつもよりぐずりやすく、イライラしている

中等度〜重度の症状(以下の症状は貧血がかなり進行した場合に現れます。多くの場合は軽度の段階で健診時に発見されます。)

  • 心臓がいつもより速く動く、呼吸が速くなる
  • 発達のペースが同月齢の子より遅い印象(ハイハイ、歩行など)
  • 土、氷、紙など食べ物でないものを口に入れようとする行動(異食症)
  • 舌が滑らかで痛そうに見える症状
  • 爪がスプーンのように凹む変化
  • 風邪などの感染症にいつもよりかかりやすい
症状軽度中等度重度
肌の色やや青白い明らかに青白い非常に青白い、黄疸を伴うことも
活動量やや減少目立って減少ほとんど動かない
心拍数正常やや上昇頻脈、心雑音
食事食欲減退あまり食べない授乳拒否

血液検査の数値の読み方

小児科で貧血が疑われると、指先から少量の血液を採る簡単な血液検査(CBC)が行われます。検査項目がたくさんあるように見えますが、親御さんが覚えておくべきなのはヘモグロビン(Hb)とフェリチン(Ferritin)の2つだけで十分です。残りは先生が総合的に判断してくれますよ。

主な検査項目と正常範囲

検査項目略称乳幼児の正常範囲貧血時の変化
ヘモグロビンHb6〜24ヶ月:11.0g/dL以上低下(11g/dL未満)
ヘマトクリットHct33%以上低下
平均赤血球容積MCV70〜86fL低下(小球性)
フェリチンFerritin12ng/mL以上低下(貯蔵鉄不足)
血清鉄Fe50〜120mcg/dL低下
総鉄結合能TIBC250〜400mcg/dL上昇(鉄不足の代償)
トランスフェリン飽和度TSAT16%以上低下(16%未満)
網状赤血球ヘモグロビンCHr26pg以上低下(早期指標)
💡 フェリチン(Ferritin)は体内の鉄分貯蔵量を反映する最も敏感な指標です。ヘモグロビンが正常でもフェリチンが低ければ、鉄欠乏の初期段階を意味します。

年齢別ヘモグロビン正常範囲

年齢ヘモグロビン正常範囲貧血の診断基準
新生児(出生時)14〜24g/dL13.5g/dL未満
生後1ヶ月10〜18g/dL10g/dL未満
生後2〜6ヶ月9.5〜14g/dL9.5g/dL未満
6〜24ヶ月11〜14g/dL11g/dL未満
2〜5歳11〜14g/dL11g/dL未満

貧血の診断基準と重症度分類

WHO貧血重症度分類(6〜59ヶ月)

重症度ヘモグロビン値主な特徴
正常11.0g/dL以上症状なし
軽度の貧血10.0〜10.9g/dL軽い蒼白、経口鉄剤で治療
中等度の貧血7.0〜9.9g/dL明確な症状、積極的な治療が必要
重度の貧血7.0g/dL未満輸血を検討、緊急事態の可能性
⚠️ ヘモグロビン7g/dL未満の重度の貧血はまれですが、すぐに医療機関の受診が必要です。ほとんどの赤ちゃんの貧血は軽度で、定期健診で見つかり、鉄剤で十分に治療できますよ。

鉄剤の種類と飲ませ方

貧血と診断されると、医師が経口鉄剤を処方します。正しい飲ませ方を知っておくと、治療効果を最大限に引き出すことができますよ。

小児用鉄剤の種類

種類元素鉄の含有量特徴
硫酸第一鉄シロップ約20%最も一般的な処方、費用が安い
含糖酸化鉄(インクレミン)約6%胃腸の副作用が少なく飲みやすい
鉄ドロップ製品により異なる乳児用、正確な用量調節が可能

用量

  • 治療用量:元素鉄換算で3〜6mg/kg/日、1日1〜3回に分けて投与
  • 予防用量(早産児):元素鉄換算で2mg/kg/日
  • 最大用量:1日の元素鉄が15mg(乳児)〜60mg(幼児)を超えないように

正しい飲ませ方

1. 空腹時の投与が原則

  • 食事の30分〜1時間前、または食後2時間
  • 空腹時の吸収率は約2〜3倍高い
  • ただし、お腹が張る場合は少量の食事と一緒に投与可能

2. ビタミンCと一緒に

  • オレンジジュース、いちごのしぼり汁などビタミンCが豊富な飲み物と一緒に
  • 鉄分の吸収率が最大6倍まで増加

3. ミルク・カルシウム剤とは間隔をあける

  • ミルク、乳製品、カルシウムサプリメントとは最低2時間の間隔を
  • カルシウムが鉄分の吸収を妨げるためです

4. 歯の着色を予防

  • 鉄シロップは歯を黒く変色させることがある
  • シリンジで口の奥に入れる方法が効果的
  • 服用後は水で口をすすぐか、歯を磨く
💡 鉄剤は最低3ヶ月以上は継続して服用する必要があります。なぜなら、体内の貯蔵鉄(フェリチン)を十分に補充するのに時間がかかるからです。症状が良くなっても自己判断でやめないでくださいね。

鉄剤の副作用と対処法

鉄剤を服用すると、一部の赤ちゃんに副作用が現れることがあります。ほとんどは一時的なもので、対処法がありますので安心してくださいね。

  • 便が黒くなる:これは正常な反応です。吸収されなかった鉄分が便として排出される際に黒くなります。鉄剤をやめると元の色に戻ります。ただし、便に血液が混じっている場合は医師に相談してください。
  • 便秘または下痢:投与量を分けて与えるか、食事と一緒に飲ませると改善します。水分や食物繊維の摂取も増やしましょう。
  • 吐き気・嘔吐:空腹がつらい場合は少量の食事と一緒に飲ませましょう。少ない量から始めて徐々に増やす方法も効果的です。
  • 腹痛:用量を減らしてから、1〜2週間かけてゆっくり増やして体を慣らしていきましょう。
副作用頻度対処法
黒い便ほぼすべての赤ちゃん正常な反応、心配不要
便秘約20〜30%分割投与、水分・食物繊維を増やす
吐き気・嘔吐約10〜15%食事と一緒に、少量ずつ投与
歯の着色シロップ製剤シリンジ使用、服用後に歯磨き

治療経過とフォローアップスケジュール

鉄剤の服用を始めると、いつ頃効果が現れるのか、どのタイミングで再検査をするのかを知っておくと、治療の見通しが立って安心ですよね。

治療反応のタイムライン

1. 服用開始後3〜5日

  • 網状赤血球(reticulocyte)の増加が始まる
  • ヘモグロビンの変化はまだわずか

2. 服用開始後1〜2週間

  • 網状赤血球数がピークに達する
  • 赤ちゃんの活動量や食欲が少しずつ改善

3. 服用開始後4週間(1ヶ月)

  • ヘモグロビンが1〜2g/dL上昇することが期待される
  • 最初のフォローアップ血液検査を実施

4. 服用開始後2〜3ヶ月

  • ヘモグロビンが正常化
  • 2回目のフォローアップ検査で正常を確認

5. 服用開始後3〜6ヶ月

  • 貯蔵鉄(フェリチン)が正常化
  • 治療終了の可否を判断
時期検査項目期待される変化
治療開始前CBC、フェリチン、血清鉄、TIBC基準値の確認
4週間後CBC(Hb中心)Hb 1〜2g/dL上昇
2〜3ヶ月後CBC、フェリチンHb正常化、フェリチン上昇開始
3〜6ヶ月後フェリチン貯蔵鉄の正常化(12ng/mL以上)
💡 4週間後のフォローアップ検査でヘモグロビンが1g/dL以上上昇していない場合は、服用のコンプライアンスの確認や、他の貧血原因の検査が必要です。

輸血が必要な場合

鉄欠乏性貧血のほとんどは経口鉄剤だけで十分に治療できます。輸血が必要になるケースは非常にまれですが、以下のような深刻な場合には検討されることがあります。

  • ヘモグロビンが5g/dL未満、または急激に低下している場合
  • 心不全の症状(速い呼吸、頻脈、むくみ)を伴う場合
  • 活動性の出血がある場合
  • 手術前に貧血の是正が必要な場合

輸血は濃厚赤血球(pRBC)を少量ずつゆっくり投与します。心臓への負担を減らすため、10〜15mL/kgを4時間かけて輸血します。輸血後も根本的な原因の治療のため、経口鉄剤の服用を継続します。

予防のためのスクリーニング検査

日本小児科学会およびアメリカ小児科学会(AAP)推奨のスクリーニング

  • 生後9〜12ヶ月:すべての乳児にヘモグロビンまたはヘマトクリット検査を推奨
  • ハイリスク群(早産児、低出生体重児):生後4ヶ月から早期検査
  • 12ヶ月以降:リスク要因がある場合は毎年検査

主な予防策

  • ミルク育児の場合は鉄分強化ミルクを使用
  • 6ヶ月から鉄分豊富な離乳食を開始(お肉、鉄分強化シリアル)
  • 完全母乳育児の赤ちゃんは4ヶ月から鉄分補給(AAP基準:1mg/kg/日)
  • 12ヶ月前の牛乳は避ける
  • 12ヶ月以降は牛乳の摂取量を1日480〜720mL以下に制限
💡 日本では乳幼児健診の際に貧血の検査を受けることができます。9〜10ヶ月健診の際に、先生に貧血検査について聞いてみてくださいね。

ベビスナで赤ちゃんの貧血を管理

鉄欠乏性貧血は継続的なフォローアップが重要です。ベビスナアプリで赤ちゃんの健康状態を体系的に記録・管理しましょう。

  • 健康記録:血液検査の数値(Hb、フェリチンなど)や鉄剤の服用スケジュールを記録して、治療の経過をひと目で確認
  • 授乳・離乳食の記録:鉄分豊富な食事を記録し、栄養バランスをモニタリング
  • AI相談:貧血の症状や鉄剤の副作用など、気になることをいつでもAIチャットボットに相談

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よくある質問(FAQ)

Q: 赤ちゃんの貧血検査は何ヶ月で受けるべきですか?
A: AAPや日本小児科学会では、生後9〜12ヶ月にすべての乳児の貧血スクリーニングを推奨しています。早産児や低出生体重児は生後4ヶ月から早期検査が必要です。赤ちゃんの顔色やエネルギーレベルが気になる場合は、いつでも小児科で血液検査をお願いしましょう。

Q: 鉄剤を飲ませたら便が黒くなりましたが、大丈夫ですか?
A: はい、正常な反応です。吸収されなかった鉄分が便として排出される際に黒くなります。鉄剤の服用をやめると元の色に戻ります。ただし、便に血液が混じっていたり、タール状で強い臭いがある場合は、消化管出血の可能性があるため、すぐに医師に相談してください。

Q: 鉄剤はどのくらいの期間飲ませる必要がありますか?
A: ヘモグロビンが正常化した後も、最低2〜3ヶ月は鉄剤の服用を続けて、体内の貯蔵鉄(フェリチン)を十分に補充する必要があります。治療期間は通常3〜6ヶ月です。早めにやめてしまうと貧血が再発する最も多い原因になります。

Q: 母乳育児の赤ちゃんでも貧血になりますか?
A: はい、なり得ます。母乳には吸収率の高い鉄分が含まれていますが、総量は少ないです。生後4〜6ヶ月で出生時の貯蔵鉄が枯渇するため、6ヶ月以降は鉄分豊富な離乳食を始めるか、医師に相談して鉄分補給を検討してください。

参考文献

赤ちゃんの鉄欠乏性貧血 | 血液検査の数値・鉄剤の飲ませ方・治療ガイド

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